瞳子
「それを言ったら、瞳子こそ、祐巳さまのことお姉さまって呼んでないじゃない。ちゃんと呼ばないといけないんじゃないの?」
「そういえば、瞳子のことを呼び捨てにするようになったのって、マリア祭がきっかけだったよねぇ」
三学期の始業式、あちこちで新年の挨拶をする声が聞こえるが、瞳子に話しかけて来る生徒はいない。ざわめきの中、ひとり廊下を歩く。孤独は寂しいが、いまはその寂しさがありがたい。
「はぁ」 これで今日、何度目のため息だろう。数えるのもばかばかしくて、それならいつまでも未練がましくそんなことをしてなければいいのに、瞳子は何度も机のなかのものを取り出しては、そこに書かれた文字を追ってしまうのだ。
「意外だわ、可南子さんからお誘いを受けるなんて」 「瞳子さんと仲直りしたいと思ったの」